鎌倉彫とは
鎌倉彫は、陰影のある彫りと、それを際立たせる漆の深い色調が特長的な彫刻漆器のひとつで、そのルーツは鎌倉時代にまで遡ります。当時、中国・宗の禅宗文化とともに伝わったさまざまな美術工芸品の中に、彫漆(ちょうしつ)という技法がありました。
彫漆は、漆を何度も塗り重ねた層に彫刻を施すという大変手間のかかる高価なものであったため、鎌倉の仏師たちがこれを模して木地に文様を彫り、漆を塗って仕上げる新たな技法を生み出し、禅宗寺院の仏具に写したといわれ、これが鎌倉彫のはじまりとされています。現在では、国の伝統的工芸品に指定されています。
一翆堂の鎌倉彫
女性の目線で、ほんとうに使いやすいものを
一翆堂では、茶托や皿、菓子鉢といった日用品や茶道具などを主に制作しています。伝統的工芸品として「飾って美しい」だけでなく、身近な日常使いのものとして使う場面をイメージし、実用性を考えながら、デザインや図柄を決めていきます。「料理が美しく引き立つように」「花の色や形が映えるように」など、女性らしい「使い手の視点」を活かした作品づくりが、一翆堂の鎌倉彫の一番の特長といえます。
世代を超えて、使い続けてほしい
鎌倉彫は、使うほどに漆の色味や艶が変化して、風合いが増していくのも魅力です。漆を塗り重ねるため丈夫で軽く、百年は持つといわれます。日々使ってこそ、変化を楽しむことができ、暮らしにゆとりと潤いをもたらすもの、それが鎌倉彫です。母から子へ、そして孫へと世代を超えて使い続けていただけたら、これほどうれしいことはありません。毎日の暮らしの中でどのようにお使いいただけるのか、ワクワクする思いで制作をしています。
一翆堂のデザイン
伝統の技×モダンデザイン
鎌倉彫には彫りと漆塗りの工程がありますが、一翆堂では彫りを専門としています。椿や牡丹などの植物、渦や唐草などの屈輪文といった、鎌倉彫の古典的な文様にこだわらず、季節を問わず使える幾何学模様、海外の建築物やアートなどからヒントを得た図柄など、伝統の技をベースにした今の暮らしになじむデザインを追求しています。
暮らしに根づいていくように
食卓の器や茶道具などは、一緒に並べる器や道具といかに調和しているか、ということも大切です。図柄ばかりが主張することなく、互いを引き立て合うもの、そこに盛る料理やお菓子でがらりと雰囲気が変わり、使うたびに新たな発見があるものは、使う楽しみが広がります。そうして暮らしに根づいていき、長く愛される鎌倉彫を目指しています。
軽やかな存在感がアクセント
ペンダントやブローチ、帯留めなどの装身具も伝統的な図柄にモダンなモチーフが融合した一翆堂らしいデザインです。木製ならではの軽さは普段使いにふさわしく、斬新なのに主張しすぎない独特の存在感があり、シンプルな装いに合わせても、さりげなく上品なアクセントになります。
鎌倉彫をもっと身近に
今後はアイテムを増やして、より多くの方に鎌倉彫に親しみ、お使いいただけるよう、新しい形やデザインを考えています。手仕事ならではのぬくもり感や軽さなど、実際に触れて、感じていただく機会も増やし、新たな鎌倉彫の「ファンづくり」ができればと知恵を絞っています。